2017年
3月
12日
日
当院でも犬のコアワクチン(ジステンパーウイルス CDV、犬パルボウイルス CPV、犬アデノウイルス CAV)に対するIgG抗体価を判定できる検査キットである『犬用ワクチチェック』公式URL https://vaccicheck.jp を導入しました。
まず、コアワクチンとは何ぞや??...からお話したいと思います。
コアワクチンは致死性が高くすべての個体=動物に接種が求められるワクチンのことで、今回のCDV,CPV,CAVがこれに該当します。
ちなみに3月から新年度の狂犬病予防接種が始まっていますが、これもまたコアワクチンに分類されます。
では、なぜこの抗体価測定が行われるようになってきたかというと、、、
“そもそも本当に毎年1回追加接種をする必要があるのか??”という議論が世界的に増えてきたからです。
当院でもワクチンの追加接種のお知らせを年1回で出していますし、私も獣医師になってから当たり前のようにワクチンは1年ごとに追加接種するものだと、特に大きな疑問を持たずにやってきました。
しかしながら、ワクチン接種によるアレルギー反応やアナフィラキシーショックなど、ワクチンを接種したことで不利益・不幸を被った犬や飼い主さんがいたことも知っています。
また、法令で義務付けられている狂犬病予防接種の是非についてはややこしくなってしまうので今回は割愛します(狂犬病予防接種は犬のための注射ではなく、人間を守るための注射なのでちょっと今回のテーマとはズレてしまいます...)が、高齢で病気の治療もしているのに毎年ワクチンを接種しないといけないの??...って懐疑的になってしまうのも現実問題あります。
そもそも年1の追加接種っていう科学的根拠(エビデンス)はあるのか??...ってネット社会によって誰しもが多くの情報を得る現在ではワクチン接種に対しての否定的な意見が出てきているのも確かです。
ワクチン接種は動物病院と製造メーカーの懐を満たすためだけの不当なものだッ!!...との声を耳にしたこともあります。
私個人の意見としては、“ワクチン接種は不要!!”...というのは大きな認識不足・勉強不足だと思っていますし、誤解があると感じます。
しかしながら、“本当は必要ないのに接種し続けるってのはどうなのか??”...とは感じるようになってきましたし、その疑念に対してはエビデンスに則った回答をしないといけないと思うようになってきました。
ペットショップやブリーダーから子犬を購入された多くの方はご経験があるでしょうが、だいたい1回はワクチンを接種してある状態でみなさんの新しい家族になっていると思います。
その後「あと1回ないし2回近くの動物病院でワクチンを打ってください」と、言われたご記憶はないでしょうか?
子犬は母犬からの初乳を介して移行抗体という免疫をもらって成長していきます。
この免疫期間を一般的には「受動免疫」といいますが、この時期に打ったワクチンはこの移行抗体が排除してしまうので十分な免疫は備わりません。
この移行抗体の効果が薄れていく生後8~12週齢(生後2~3ヵ月齢)から移行抗体がほぼほぼ消失する生後16週齢(生後4ヵ月齢)を過ぎるくらいに最後のワクチンが打ち終わるように3~4週間隔で平均2~3回のワクチン接種を行っていくわけです(ブースター免疫)。
このようなワクチン接種で自前の免疫力をつけていくことを「能動免疫」といいます。
その後は先の話に戻りますが、年1回の追加接種を行っていく......というのがこれまでの日本のワクチンプログラムでした。
一方で、ワクチン接種の持続期間の研究が盛んな欧米では今や『コアワクチンは3年に1回』という結論になってきています。
研究ではコアワクチンの抗体持続期間はノンコアワクチン(パラインフルエンザウイルスやレプトスピラ)に比べてはるかに長いことが判ってきているからです。※ ノンコアワクチンは致死性が低く、地域性や生活環境によって接種が行われるものです。また、ノンコアワクチンの抗体持続期間が短いこともあり病気と抗体価との相関性はないと考えられています。
欧米の“右に倣え”的な風潮もあってかこういった情報に敏感な一部の飼い主さんの中に『3年1回説』が根付いてきました。
それでも重要なことは、ワクチンを毎年であろうが3年ごとであろうが愛犬が感染症にかかってしまってはまったく意味がない‼︎、ということです。
飼い主さんの独断で「3年でいいや〜♪」なんてことで感染症に罹患してしまっては本末転倒です。
それでもワクチンの副作用や不必要な接種を避けるための手立てとして、抗体価測定がクローズアップされるようになってきたのです。
以前から外注検査にて抗体価測定は可能でしたが、時間と費用がかかり、煩雑で...私自身もそれほど多く検査をした記憶がありません。
その点、この犬用ワクチチェックはたった23分で院内判定が可能となり、万一3つのコアワクチンの抗体価が低ければその場でワクチン接種が可能となりました♫(注意)数値表記される定量検査ではなく、専用のスケールを用いた半定量検査ですので正確性にはやや劣ります
最近ではトリミングやペットホテルに預ける際にはワクチン接種が義務付けられるケースが増えてきていますが、この検査キットには飼い主さんにお渡しできる検査結果用紙がありますので、従来のワクチン証明書と同様に提示してもらえれば問題はありません。
検査費用はワクチン接種1回分程度なのでそれほど飼い主さんの負担にもならないと思います。
ワクチンアレルギー歴のある子、高齢・老齢のワンちゃんあるいは病気を抱えていているワンちゃんでワクチン接種の有無を懸念される方は健康診断を兼ねてこのワクチチェックをぜひご検討してみてください!
少量の採血量で診断可能です。
勘の冴えてる方なんかは『先生のところ、こんな検査したらワクチンの売り上げ減るんじゃない!?』ってご心配してくれそうですけど... ww
ご心配なく!
基本的に無意味なことをするのがキライなタチなだけなんで〜 ww
そんなことよりこちらの都合で不利益を与えることの方がよっぽど辛いですから!!